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スーパーラットとは?

Q. 殺鼠剤が効かないネズミのことですよね?

A. 正しくは一部の殺鼠剤が効きにくいネズミです。以下に概要と対処法を解説しましょう。

固形飼料にかぶりつくクマネズミの子供

1. こんなネズミです

 スーパーラットとは「ワルファリン抵抗性のネズミ」のことを言います。難しい言葉が出てきましたが、何のことはない。ワルファリンという有効成分を使った殺鼠剤に抵抗性がある(=効きにくい)ネズミなのです。ワルファリンの他にクマテトラリル、フマリンといった有効成分も同様に効果が出にくい場合があります。このようなネズミは海外でドブネズミやハツカネズミ、日本ではクマネズミとドブネズミで報告があります。

殺鼠剤の有効成分は取扱説明書や商品のラベルに記載されている

2. 見分けるのは難しい

 抵抗性(=効きにくい)に関してもう少し説明しましょう。このワルファリンをネズミの種類ごとに「所定の濃度」で「一定日数与え続ける」という調査を行い、その結果死ななかったものを抵抗性のネズミ(これがいわゆるスーパーラット)と定めています。また抵抗性を持つネズミ同士が交尾して生まれた子供にはその特長が遺伝します。このように定義は決まっており、遺伝の法則も解明されている一方で、普通のネズミと見た目や行動は何ら変わりません。そのため駆除のプロでさえ目の前に現れたネズミを外見だけでスーパーラットであるかどうか見抜くことは不可能です。

そのネズミがスーパーラットであるかどうかは厳密な試験をして確かめなければ分からない

3. これが対処法

 簡単に言えばワルファリン以外の有効成分を用いれば良いのです。選択肢は大きく分けて2つあります。1つはワルファリンと同じように、何度か食べさせることにより効果を発揮する殺鼠剤。もう1つは食べさせればすぐに効く殺鼠剤です。それぞれ具体的にご紹介しましょう。

3-1. 何度か食べさせて効く殺鼠剤

 ジフェチアロール(またはジフェチアロン)という有効成分のものです。一般の方には「袋に入ったもの」や「ネズミが好む餌と混ぜた団子状のもの」が販売されています。いずれもネズミの姿をよく見る場所へ置いておきます。「袋に入ったもの」は殺鼠剤が人に触れるリスクが少なく、また天井裏など手が届きにくい場所へ投げ入れることができます。「ネズミが好む餌と混ぜた団子状のもの」は容器に入っていて置きやすく、また剥き出しなのでよりネズミに餌と認識させやすいでしょう。

「遅効性・抵抗性ネズミにも効く」と書いてあるものが該当します

3-2. すぐに効く殺鼠剤

 近年ではリン化亜鉛という有効成分のものがほとんどです。「粉状で専用の容器に入れて使うもの」や「小さな袋入りのもの」があります。「粉状で専用の容器に入れて使うもの」は容量が多く工場など敷地面積の広い場所での大量設置・一斉駆除に適しているでしょう。「小さな袋入りのもの」は入り数が適量で作業もしやすく、一般家庭や飲食店の厨房といった比較的狭い範囲で使用しやすいです。

「急性毒」や「即効性」で「抵抗性ネズミにも効く」と説明されているものが該当します

4. 注意事項

 ネズミによく効く反面、同じ哺乳類である人や犬、猫といった動物にも有害です。そのため使用の前に取扱説明書をよく読み、正しくお使い下さい。具体的に気をつける点は以下の通りです。

4-1. 誤食の防止

 特に「すぐに効く殺鼠剤」は中毒症状が早く出るため要注意です。従って小さなお子さんの手が届かない場所やペット・野生動物が来ない場所へ置き、誤って食べられることが無いようにしましょう。他に殺鼠剤を置いたこと、置いた場所はどこか、そういった情報の周知も大切です。あるいは殺鼠剤を専用の容器に入れて置く考え方もあります。これは屋外では非常に有効な手段となります。

海外では普通に見られる「殺鼠剤を入れるための容器」

4-2. 他の餌・食品と混ぜない

 先ほどご紹介した殺鼠剤に限れば、ネズミが好む餌や食品と混ぜて使用できません。その理由には「使用方法から外れる(=殺鼠剤の使い方に関わる法律に違反)」と「効きが悪くなる」が挙げられます。このうち後者は「すぐに効く殺鼠剤」で懸念があります。これは餌や食品と混ぜることで殺鼠剤の有効成分の濃度が低下し、食べたネズミが中毒を起こすものの死に至らないという結果を招きます。そしてネズミにそれが毒であると気づかせてしまい、二度とその殺鼠剤を食べない結果に繋がります。よく覚えておきたいポイントです。

餌と混ぜて使ってよいかどうかは取扱説明書やラベルをよく読んで確認する

5. 終わり:スーパーラットを疑う前に

 日々ネズミを駆除する我々も「これはスーパーラットか?」と疑問を持つ場面があります。こんな時は以下に挙げた2つの工夫ができているかを確認します。ご参考まで。

5-1. 効果を出す工夫はできているか?

 冒頭に出てきたワルファリン(およびクマテトラリル、フマリン)は、毎日摂取させていれば微量でも確実に効果を発揮します。効くまでにかかる日数は1週間前後と考えておけばよいでしょう。一方で一度食べさせてから次に食べさせるまで1日や2日と間隔が開けば開くほど効きは悪くなります。従って、ネズミが活動している場所の隅々に殺鼠剤を配置し、ネズミが見つける・食べてくれる確率を少しでも上げるような工夫をしています。

配置した殺鼠剤がすぐに完食される場合は追加で多く配置することもコツ

5-2. 餌を無くす工夫はできているか?

 特にクマネズミは警戒心が強く、置いたばかりの殺鼠剤をなかなか食べません。そこでネズミを「殺鼠剤以外に食べるものが無い状況」に追い込む工夫をします。具体的には床の上の生ゴミを徹底的に清掃して片付ける、現場の従業員さんに生ゴミは蓋ができるゴミ箱で管理するようお願いする、戸棚や机の上に置いたままの食品を密閉容器に入れて保管していただくようお伝えするなどです。

食品のほか、意外に齧られることが多いコーヒーフレッシュ

 今回はスーパーラットについて解説しました。ネズミ駆除の基本についてはこちらのページで紹介しております。どうぞご覧ください。